(天声人語)消えた「法の支配」 2025年2月11日 5時00分
- 羅夢 諸星
- 2月11日
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「法の支配」という言葉が、今回の日米共同声明から消えたことが気になっている。日本はこれを外交の柱としてきた。2017年の安倍・トランプ会談でも、24年の岸田・バイデン会談でも、共同声明は「法の支配」の重要性をうたっている
▼どうしたことかと思っていたら、他ならぬ石破首相が、帰国直後のテレビで語っていた。「『法の支配』とバンというと、『俺に説教するのか』となる。『力による現状変更は良くないよね』といえば『それはそうだ』となる。言い方によって全然違う」。だから後者にした、ということだろう
▼扱いにくい人物と初対面でどうやりとりするか。難しさは分からぬでもない。ただし忠言は耳に逆らうとも言う。顔色をうかがって過度に配慮した言葉は、もはや忠言ではなく、何かを言ったという自己満足に過ぎない
▼会談の直前には、こんなこともあった。イスラエルの首相らに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)に、トランプ氏が反発。ICC関係者に制裁を科す大統領令に署名した
▼そんなことをすれば「法の支配」がむしばまれると、英独仏などの79カ国・地域は声明を出した。わが日本は、これにも名を連ねていない。ICCの所長は赤根智子さんだ
▼1対1で言わず、他国と一緒でも言わず。いったい、いつなら言うのだろう。そもそも、大国の意に沿わねば口にできない「法の支配」など、矛盾でしかない。自らが築いてきたものをおとしめた。残念としか言いようがない。

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