(社説)中国の外交 大国の責任忘れるな2025年3月13日 5時00分
- 羅夢 諸星
- 3月13日
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ルールを軽んじ、国力をかさに着て物事を動かそうとするトランプ米政権に対し、第2の大国である中国は、いかなる外交を展開しようとしているのか。
大国も小国も平等だ。一部の国が国際政治を牛耳ってはならない。国際ルールを重視すべきだ。相手によって対応を変える二重基準は用いない――。
11日まで開かれていた全国人民代表大会中の記者会見で、王毅(ワンイー)外相は中国外交の原則をそう語り、国連安全保障理事会常任理事国として責任を担う姿勢を改めて示した。
中国が実際に行っている外交との乖離(かいり)は否めない。
まず問われるべきはウクライナ問題だ。2022年のロシアの侵攻開始直後、「話し合いでの解決を呼びかけた」と王氏は語った。だが停戦に向けて中国が積極的に動いた形跡はない。
それどころか中国は一貫してロシア寄りの姿勢をとってきた。ロシアからの石油輸入はこの3年で急伸。ロシアを経済面で支えてきたのは明らかだ。今年は第2次大戦後80周年を記念して、首脳の相互訪問があるとみられている。
安保理では先月、米国がロシアの責任に触れずに「ロシアとウクライナの紛争の迅速な終結」を求める決議を提出、採択された。欧州勢は棄権、中国は賛成した。
その10日前、王氏は国際会議で米国を批判し、欧州との関係を重視する姿勢を示していた。対ロ関係維持にきゅうきゅうとするあまり、矛盾が次々に露呈している。
一方で周辺国への威圧的な姿勢は相変わらずだ。南シナ海の岩礁の領有権を争うフィリピンに対しては、大型巡視船だけでなく軍用機も使って圧力をかけている。
日本に対しても同様だ。尖閣諸島周辺海域への中国公船侵入は沈静化の兆しがない。
東京電力福島第一原発の処理水放出を受けた日本産水産物禁輸は、安全が確認されれば段階的に緩和することで昨年9月に合意したが、その後の中国側の動きは停滞している。記者会見で問われた王氏は「責任ある態度で法に基づき適切に対処する」と一般論で応じるにとどまった。
国防予算は前年比7・2%増の高い伸びとなったが、内訳が公表されないこと自体が国際社会の不信感を招いている。近く3隻目の空母が就役すると伝えられ、核戦力増強のペースも上がっている模様だ。もはや自国防衛の範囲を越えている。
責任ある大国を自任するなら、自らの言行の不一致をただすべきだ。

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